指地蔵

男子と女子





砂粒をさらに細かく粉砕したような埃っぽい夏の道


菊の葉に似た膝丈ほどの雑草群落


両手を生やした不思議な形の地蔵さん


なぜか知らねどこの集落では
“指地蔵”と呼ばれている


きみは指地蔵の前に僕を連れて行き


   ほら、
   あなたにそっくりだわ

   目が細くて黒目がない


という



ああ、と僕は答え、
きみと話したいのはそんなことじゃないと言いかけて口ごもる



「指の地蔵さんはよ〜呑気な地蔵さんだよ〜」



ううむ・・きみという人は

この集落に伝わるトラディショナルソングを何の前振りも無く歌い出すのか


実に自由奔放な女の子だね




ふと目をやると
“一部ロダン作”とでもいったらいいのか

場違いにリアルな両の腕が地蔵肩口から伸びていて、その掌の指が天を掴もうとしている

無闇に律儀そうなその姿勢が僕の癇を刺激した

それはもう恥ずかしくてとても見ていられないというような種類の刺激





  近くに見えても遠いんだよ

  ばーか





僕は心の中でそう罵るときみに言った


地蔵って、神様の仲間なのかな?それとも仏の一種?


バカねえ、地蔵は地蔵でしょ


バカって何だよ、きみが好きだ


わ、何それ。
もしかして地蔵の祟り?


何に視線をあわせていいのやらわからなくなった僕はとりあえず空を見上げてみた



空は青い


とにかくバカみたいに青い






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